プレイバック 出産 ラスト
- 2009/02/11
- 23:17
「もうちょっと本気出してふんばることもできるはずだよなー。でも今はなんか疲れてるし、いっこうに出て来る気配ないし、なんかやる気出ないなぁ」なんてことを考えながら、それでも陣痛の波がくるとそこそこいきむこと2時間弱。本当に出てくるんだろうか、というよりは、本当にこの苦しみは終わるんだろうかといった気持で、もう活力を失いかけていた。
でも先生が「うまくすれば次で出て来るかも」と言い出したので、半信半疑でちょっと気合いをいれていきんでみる。すると助産師さんが「すごく上手!その感じでいきんで、ここですよ~」と肛門のあたりをさわってきた。おトイレでいきむ感じで産むって噂は本当だったんだ。場所さえわかれば、あとは力を入れるのみ。2~3回いきむと、「頭がちょっと見えて来たよ」と助産師さん。先生が夫に「ご主人、ちょっと観てみなよ」と私の頭のほうへいざなおうとしている。マジかよ……と思いつつ抵抗する気力なし。
それにしても、陣痛も痛いし、いきむのも気合いがいるのだが、いきんだ後の腹痛がすごく辛い。「うーうーうー!はぁ~」と悩ましい声をあげてしまう。ここでも私は辛いながらも、「もっと自分、獣っぽい声をあげると思ってたけど意外とかわいい声で済ませられているな」などと考える頭があった。
そうこうしているうちに、本当に出てきそうになってきたらしく、スタッフの動きが忙しくなる。足にカバーをかけられ、股のあたりをすごく明るいライトで照らされ、ホースのようなものから出る消毒液みたいなのでピューっと股を洗浄された。そういえば分娩台にあがってすぐ、剃毛もされていた。
さらに「出て来るときにさけるをいけないので、出口を切りますね」と先生。「はい、お願いします」と結構冷静に返事をする私。思えば話しかけられたことにたいして、返事は一貫して冷静にできていたと思う。
麻酔に注射はチクッとしたが、切られた痛みはほとんど感じない。3~4回ジョキジョキやられたようで、「まだ切るの?」とは思ったけれど、陣痛といきんだ後の痛みでそれどころではない。噂にはそうよく聞いたけれど、本当だった。
これでやっと、産まれるんだ!という実感が湧き、本気出していきもうという気合いも満ちて来た。
しかしここへきて、夫が写真撮り過ぎにより、デジカメのバッテリーがなくなったという。「チッ!いいところで!」と思うが文句いう気力なし。でも先生がカメラを貸してくれるということで、ちょっとほっとする。
残り少ない力をふりしぼって、陣痛の波にのせてフン!といきむ。あとで夫にきいたらものすごい赤い顔をしてふんばっていたらしいが、ここではもうどう見られているかなどおかまいなしに、全身でいきむ。
助産師さんが「回旋してますね」という。赤ちゃんは回旋しながら出て来るものらしいと聞いていたが、いよいよそれが来たのがわかった。
すると2回ほどで、先生が「あと一回で出てきそうだから、私が声をかけたらいきむのをやめて、胸の前で手を組んでハッハッハッハッというタンソク呼吸にして」という。いよいよだ。陣痛の波にのせて、フン~!といきんだ。出て来る感じはまったくしないけど、先生が急いで「呼吸変えて!」というので、胸の前でエックスに手を組み、犬のようにハッハッハッといきを吐いた。夫の「おお!」という歓声。
産まれたんだ! と思うより早く、体がウソのように楽になり、産まれた喜びより、恥ずかしながら楽になった喜びが先に来た。
でも間もなく赤ちゃんが胸の上に載せられて、うわーこんなちゃんとした人間が本当にお腹の中にいたんだ!という感慨に変わる。
第一印象は「なんと賢そうなお方!」という感じだった。
お腹にいる頃から、中の子どもに助けられている感じがすごくしていて、頼れるおじいさんみたいな存在に思っていたけど、そのイメージにとても近い気がした。
子どもと夫と、涙を流しながら入って来た母と写真を撮る。夫は「ありがとう」と言ってくれた。
陣痛中、かけつけてくれた母を、正直「やることもないのにうざったいなぁ」と感じていたけれど、体が楽になって急に感謝の気持が沸いて来て、笑顔で「産まれたよ」と報告できた。
ほっとひといき、と思ったのもつかの間。お腹の中にまだ胎盤が残っているのでそれを取り出すという。私たち夫婦はそれを食べたいと思っていたのだが、取り出されたそれはまずそうなレバーみたいで、「これ観ても食べたい?」と先生にいわれて、そうは思えず断念。
続いて会陰切開の傷を縫合。また麻酔をかけてもらったものの、結構長いこと縫われる。さすがにこわくて足がとじ気味になる。「右足、ちゃんと開いてねーそのほうがはやく終わるから」と助産師さんにさとされるも、どうしても力が入ってしまう。そんな最中、夫がお風呂に入れられている我が子の様子を逐一リポートしてきて、正直こっちはそれどころじゃないのよ~と思いつつ、とりあえず聞いておく。
縫合の糸は自然に溶けると聞き安心。
子どもの体重と出生時刻をいわれる。数字がきっちり頭に記録された。
「がんばりましたね。今日はあなたすごく疲れているから、睡眠薬を飲んでゆっくり休んでください」と先生が優しく言うのでとてもいやされた。
助産師さんが出産記録をつけながら「陣痛ついてから5時間半、安産だったんですね」という。「出産は本当に地道な作業で、少しずついきんで出し、いきんで出しという感じで」と言われ、本当にそう思う。
いきむのを我慢して我慢して、はいいいですよといわれていきんで出る、というのが出産のスタイルだと思っていたけれど、自分の場合はいきみたいのにいきみ方がわからないといった、ちょっと変わったものだった。
いきみ逃しのために、夫が分娩室に持参していたテニスボールとゴルフボール(肛門にあてるといきみが逃しやすいらしい)も、結局出番がなかった。
出産て本当に人それぞれなんだなーと思った。
こうして私の出産は無事終わった。
多くの人の力をいただきながらの、自分との闘いだったと思う。
痛みとか、お腹を押されることは辛かったけれど、夫や病院スタッフたちのリードはすばらしくて、今、最中に先生や助産師さんたちに囲まれながらふんばっていた時のことを思い返すと、とてもあたたかい気分になる。
9カ月の時に、産後の体ケア講座でご一緒した、3カ月の男の子のママさんが「お産楽しんでね。私も長丁場だったけど、いいお産だったんですよ~」といっていて、「いいお産、私もしたいな」と思っていたけれど、自分もなかなかいいお産ができたのではないかと思う。
赤ちゃんもがんばったけど、私もがんばった。
普通出産の報告メールはみんな「産まれました」というタイトルなのだけれど、出産直後の私はとにかく自分の手柄が誇らしいという気分が強く、みんなには「産みました」というタイトルでメールを送った。
それからの生活はきっと赤ちゃんが主役になると感じて、今だけは自分を主役にしてあげようという気分だった。
車いすに載せてもらい、病室へ帰る。ああ、生還できたという気持。
体はものすごく疲れているけれど、心はハイで、何か夫としきりにしゃべっていた気がする。
結婚式の直後と同じ種類の疲れと、やりとげた喜び。
鏡を見ると、いきんだときに毛細血管が切れたらしく、顔中に黒い色素沈着ができていた。
でも先生が「うまくすれば次で出て来るかも」と言い出したので、半信半疑でちょっと気合いをいれていきんでみる。すると助産師さんが「すごく上手!その感じでいきんで、ここですよ~」と肛門のあたりをさわってきた。おトイレでいきむ感じで産むって噂は本当だったんだ。場所さえわかれば、あとは力を入れるのみ。2~3回いきむと、「頭がちょっと見えて来たよ」と助産師さん。先生が夫に「ご主人、ちょっと観てみなよ」と私の頭のほうへいざなおうとしている。マジかよ……と思いつつ抵抗する気力なし。
それにしても、陣痛も痛いし、いきむのも気合いがいるのだが、いきんだ後の腹痛がすごく辛い。「うーうーうー!はぁ~」と悩ましい声をあげてしまう。ここでも私は辛いながらも、「もっと自分、獣っぽい声をあげると思ってたけど意外とかわいい声で済ませられているな」などと考える頭があった。
そうこうしているうちに、本当に出てきそうになってきたらしく、スタッフの動きが忙しくなる。足にカバーをかけられ、股のあたりをすごく明るいライトで照らされ、ホースのようなものから出る消毒液みたいなのでピューっと股を洗浄された。そういえば分娩台にあがってすぐ、剃毛もされていた。
さらに「出て来るときにさけるをいけないので、出口を切りますね」と先生。「はい、お願いします」と結構冷静に返事をする私。思えば話しかけられたことにたいして、返事は一貫して冷静にできていたと思う。
麻酔に注射はチクッとしたが、切られた痛みはほとんど感じない。3~4回ジョキジョキやられたようで、「まだ切るの?」とは思ったけれど、陣痛といきんだ後の痛みでそれどころではない。噂にはそうよく聞いたけれど、本当だった。
これでやっと、産まれるんだ!という実感が湧き、本気出していきもうという気合いも満ちて来た。
しかしここへきて、夫が写真撮り過ぎにより、デジカメのバッテリーがなくなったという。「チッ!いいところで!」と思うが文句いう気力なし。でも先生がカメラを貸してくれるということで、ちょっとほっとする。
残り少ない力をふりしぼって、陣痛の波にのせてフン!といきむ。あとで夫にきいたらものすごい赤い顔をしてふんばっていたらしいが、ここではもうどう見られているかなどおかまいなしに、全身でいきむ。
助産師さんが「回旋してますね」という。赤ちゃんは回旋しながら出て来るものらしいと聞いていたが、いよいよそれが来たのがわかった。
すると2回ほどで、先生が「あと一回で出てきそうだから、私が声をかけたらいきむのをやめて、胸の前で手を組んでハッハッハッハッというタンソク呼吸にして」という。いよいよだ。陣痛の波にのせて、フン~!といきんだ。出て来る感じはまったくしないけど、先生が急いで「呼吸変えて!」というので、胸の前でエックスに手を組み、犬のようにハッハッハッといきを吐いた。夫の「おお!」という歓声。
産まれたんだ! と思うより早く、体がウソのように楽になり、産まれた喜びより、恥ずかしながら楽になった喜びが先に来た。
でも間もなく赤ちゃんが胸の上に載せられて、うわーこんなちゃんとした人間が本当にお腹の中にいたんだ!という感慨に変わる。
第一印象は「なんと賢そうなお方!」という感じだった。
お腹にいる頃から、中の子どもに助けられている感じがすごくしていて、頼れるおじいさんみたいな存在に思っていたけど、そのイメージにとても近い気がした。
子どもと夫と、涙を流しながら入って来た母と写真を撮る。夫は「ありがとう」と言ってくれた。
陣痛中、かけつけてくれた母を、正直「やることもないのにうざったいなぁ」と感じていたけれど、体が楽になって急に感謝の気持が沸いて来て、笑顔で「産まれたよ」と報告できた。
ほっとひといき、と思ったのもつかの間。お腹の中にまだ胎盤が残っているのでそれを取り出すという。私たち夫婦はそれを食べたいと思っていたのだが、取り出されたそれはまずそうなレバーみたいで、「これ観ても食べたい?」と先生にいわれて、そうは思えず断念。
続いて会陰切開の傷を縫合。また麻酔をかけてもらったものの、結構長いこと縫われる。さすがにこわくて足がとじ気味になる。「右足、ちゃんと開いてねーそのほうがはやく終わるから」と助産師さんにさとされるも、どうしても力が入ってしまう。そんな最中、夫がお風呂に入れられている我が子の様子を逐一リポートしてきて、正直こっちはそれどころじゃないのよ~と思いつつ、とりあえず聞いておく。
縫合の糸は自然に溶けると聞き安心。
子どもの体重と出生時刻をいわれる。数字がきっちり頭に記録された。
「がんばりましたね。今日はあなたすごく疲れているから、睡眠薬を飲んでゆっくり休んでください」と先生が優しく言うのでとてもいやされた。
助産師さんが出産記録をつけながら「陣痛ついてから5時間半、安産だったんですね」という。「出産は本当に地道な作業で、少しずついきんで出し、いきんで出しという感じで」と言われ、本当にそう思う。
いきむのを我慢して我慢して、はいいいですよといわれていきんで出る、というのが出産のスタイルだと思っていたけれど、自分の場合はいきみたいのにいきみ方がわからないといった、ちょっと変わったものだった。
いきみ逃しのために、夫が分娩室に持参していたテニスボールとゴルフボール(肛門にあてるといきみが逃しやすいらしい)も、結局出番がなかった。
出産て本当に人それぞれなんだなーと思った。
こうして私の出産は無事終わった。
多くの人の力をいただきながらの、自分との闘いだったと思う。
痛みとか、お腹を押されることは辛かったけれど、夫や病院スタッフたちのリードはすばらしくて、今、最中に先生や助産師さんたちに囲まれながらふんばっていた時のことを思い返すと、とてもあたたかい気分になる。
9カ月の時に、産後の体ケア講座でご一緒した、3カ月の男の子のママさんが「お産楽しんでね。私も長丁場だったけど、いいお産だったんですよ~」といっていて、「いいお産、私もしたいな」と思っていたけれど、自分もなかなかいいお産ができたのではないかと思う。
赤ちゃんもがんばったけど、私もがんばった。
普通出産の報告メールはみんな「産まれました」というタイトルなのだけれど、出産直後の私はとにかく自分の手柄が誇らしいという気分が強く、みんなには「産みました」というタイトルでメールを送った。
それからの生活はきっと赤ちゃんが主役になると感じて、今だけは自分を主役にしてあげようという気分だった。
車いすに載せてもらい、病室へ帰る。ああ、生還できたという気持。
体はものすごく疲れているけれど、心はハイで、何か夫としきりにしゃべっていた気がする。
結婚式の直後と同じ種類の疲れと、やりとげた喜び。
鏡を見ると、いきんだときに毛細血管が切れたらしく、顔中に黒い色素沈着ができていた。
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